境界線を取り戻すまで


昔、10年間正社員として働いた職場があった。
長く勤めた場所だけれど、今でも思い出すと怒りが湧く。

仕事そのものより苦しかったのは、人間関係の近さだった。

職場では「お前」と呼ばれることがあった。
今でもこの言葉には強い抵抗がある。
私には敬意のある言葉には思えない。
どこか相手を下に見ているような、雑に扱われているような感覚があった。

さらに嫌だったのは、異性関係を聞かれることだった。
仕事とは関係のないことなのに、当たり前のように踏み込まれる。
当時は嫌だと言えなかった。
職場の空気を壊したくなかったし、そこで働き続けるためには飲み込むしかないと思っていた。

今振り返ると、あの頃の私はプライベートがほとんどなかった。

仕事が終わっても仕事の延長のような人間関係。
どこまでが自分で、どこからが職場なのか、その境界線が曖昧になっていた。

辞めて18年経つのに思い出すのは、それだけ自分にとって大きなことだったからだと思う。

でも最近気づいた。

あの経験があったからこそ、私は今、自分に合う距離感を大事にしている。

今は派遣という働き方をしている。
派遣は「身分が下」と見られることもあるかもしれない。
でも私にとっては、境界線を守れる働き方でもある。

仕事と自分の生活を分けられる。
そこに大きな意味がある。

今の私は、好きなことができている。

フランス語を学び、ブログを書き、走り、筋トレをし、料理をし、茶道を学ぶ。茶道
あるもので何かを作り出すことが好きだと、最近ようやく気づいた。

昔からあった感覚なのかもしれない。
でも、それに気づけたのは最近だ。

あの職場で感じた怒りは消えていない。
でも今思うのは、その怒りがあったからこそ、自分にとって何が大事なのかがはっきりしたということだ。

人との距離。
敬意。
自分の時間。
自分で選ぶこと。

あの頃失ったものを、今少しずつ取り戻している気がする。

そして今の生活は、その延長線上にある。