新しい仕事が始まった。
慣れない手続きや研修を終え、今は実際の業務も始まっている。忙しい毎日だが、不思議と生活のリズムは崩れていない。フランス語の勉強も続けているし、ランニングや筋トレもできている。睡眠も食事もきちんと取れている。
そんな最近の小さな楽しみがある。
職場の近くに、新鮮な魚を扱うスーパーを見つけたのだ。
昼休みに立ち寄ると、その日に入荷した魚が並んでいる。飛魚やイワシ、イカなど、どれも新鮮そうだ。しかも魚を捌いてくれる担当の方が常駐している。
昨日は飛魚とイワシを選び、捌いてもらうようお願いした。そして仕事帰りに受け取って帰宅した。
昼休みに魚を見て、「今日はこれにしよう」と決める。仕事中も、帰ったら魚を食べようと思うと少し楽しみになる。そして帰りに受け取り、自宅で味わう。
たったそれだけのことなのに、なんだかとても豊かな気持ちになる。
そして嬉しいことがもう一つある。
何度か通ううちに、魚を捌いてくれるお兄さんと顔見知りになったのだ。
おすすめの魚を聞いたり、調理方法を相談したりするうちに、少しずつ会話が増えた。スーパーで買い物をするだけなら店員さんと話す機会はほとんどない。でも魚売り場では自然と会話が生まれる。
「今日は何がいいですか?」
そんなやり取りができる相手がいることが、なんだか嬉しい。
私は海外の友人たちと連絡を取り合っている。遠く離れた国とのつながりも大切だ。しかし同時に、日常の中で顔を合わせる人との関係もまた暮らしを豊かにしてくれるのだと感じている。
私はもともと農家の家に生まれた。だからなのか、食べ物そのものへの関心が強い。フランスに興味を持った理由の一つも、食べ物を大切にする文化だった。
最近、自分の暮らしを振り返ると、豪華なことをしているわけではない。
手作りパンを焼く。
旬の魚を買う。
ハーブティーを作る。
フランス語を勉強する。
走る。
茶道を学ぶ。
どれも特別高価なものではない。
けれど、自分の手で選び、自分で味わい、人と少し言葉を交わしながら暮らしていく。そんな積み重ねが、毎日を豊かにしてくれているように思う。
昼休みに魚を見つけて取り置きし、仕事帰りに受け取る。
そして魚売り場のお兄さんと少し話をする。
そんな何気ない習慣が、今の私にはとても幸せに感じられる。