茶道とフランスと農家の実家


茶道教室の見学へ行き、6月から裏千家流茶道に入門することを決めた。

なぜ自分がこれほど惹かれたのか、一日経って考えてみた。

すると、意外なことに、茶道だけの話ではなかった。

私は兼業農家の家に育った。

父は会社員だったが、実家には農業の風景が残っていた。

築150年ほどの古い家。土間があり、納屋があり、農機具小屋があり、地下60メートルの井戸もある。

子どもの頃はそれが当たり前だった。

けれど今、空き家になった実家のことが妙に気になっている。

大学ではバイオを学んだ。

生命や自然を科学の視点から理解したいと思っていたのだろう。

その後、私はフランスに興味を持った。

私がフランスに惹かれた一番の理由は、食べ物を大切にする文化だった。

生産者を尊重し、季節を味わい、食事の時間を大切にする。

農業の風景が身近にあった私には、その価値観が自然に心に響いた。

そして今、茶道に出会った。

見学では、お菓子のいただき方や抹茶の飲み方を少し教わった。

また、茶道は花や掛け軸、建築とも深く関わっていることを知った。

茶道は単にお茶を学ぶだけではなく、日本文化そのものに触れる世界なのだと感じた。

そこでふと気づいた。

今まで別々だと思っていたものが、一本の線でつながっている。

兼業農家の家で育ったこと。

大学で生命を学んだこと。

フランスの食文化に惹かれたこと。

そして茶道に出会ったこと。

どれも、人と自然、そして文化との関わりを見つめるものだったのかもしれない。

茶道に入門すると決めたことで、新しい世界に入るというより、自分の中に昔からあった価値観に出会い直したような気がしている。

だから今、空き家になった実家の土間や井戸が気になるのかもしれない。

これから茶道を学びながら、自分のルーツについても少しずつ見つめ直してみたいと思う。