次のパリ滞在で、ひそかに夢を持っている。
パリをランニングすることだ。
以前の私は、パリを「歩く街」として楽しんでいた。
スーパーを見て回り、パン屋の前で立ち止まり、気になる通りをただ歩く。
観光名所を急いで巡るよりも、日常の空気を感じるほうが好きだった。
特に印象に残っているのは、スーパーだ。
野菜売り場、乳製品コーナー、コーヒー、量り売りのお菓子。
現地の人たちが普通に買い物をしている姿を見ながら、「ここで生活してみたい」と何度も思った。
あの頃の私は、“旅人”としてパリを見ていたのだと思う。
でも今は少し違う。
帰国後、毎日ランニングをするようになった。
筋トレも始めて、食事も見直した。
炭水化物を「太るもの」ではなく、体を動かすためのエネルギーとして考えるようにもなった。
そうやって、自分の体と向き合う生活を続けていたら、ふと新しい夢が生まれた。
「次は、パリを走ってみたい」
朝のセーヌ川沿いを走ったら、どんな空気なんだろう。
まだ静かな街を抜けて、パン屋から漂う匂いを感じながら走ったら、どんな気分になるんだろう。
観光地を巡るというより、その街の呼吸の中に入っていく感覚かもしれない。
きっと私は、速く走りたいわけではない。
景色を見ながら、自分のペースで走りたい。
今日はこの道。
明日はあの公園。
そんなふうに、その日の気分でコースを決めながら、パリの日常に混ざってみたい。
不思議だけれど、ランニングを始めてから、「旅」の感覚も少し変わってきた。
ただ見るだけではなく、体で街を感じたくなった。
歩く、食べる、走る、暮らす。
全部が少しずつつながってきている。
以前の私は、「海外旅行」に憧れていた。
でも今の私は、「海外で生活する感覚」に惹かれている気がする。
スーパーで食材を選び、コーヒーを飲み、語学を勉強し、体を動かす。
そんな日常の延長線上に、パリがある。
次のパリ滞在では、どこを走ろう。
今はまだ、ひそかな夢である。