パリでの生活を一言で表すなら、
「孤独なのに、孤独じゃない」という不思議な感覚だった。
誰とも深く関わっていない。
家族もいないし、気軽に会える友人もいない。
それなのに、なぜか「ひとりぼっち」ではなかった。
むしろ、日本にいる時よりも、
心は穏やかで、満たされていた気がする。
その理由は、おそらく「人との距離感」にある。
パリでは、基本的に誰も干渉してこない。
何をしていても、どこにいても、
自分の領域はしっかり守られている。
でも同時に、街には人がいて、生活があって、
カフェや図書館、公園といった「開かれた空間」がある。
完全に一人でありながら、
社会から切り離されている感覚はない。
日本にいると、
「人と関わる=安心」
「一人でいる=孤独」
という構図になりがちだ。
でもパリでは、その前提が崩れる。
一人でいることは自然なことで、
誰かと無理に繋がる必要もない。
それでも、自分はちゃんと世界の中に存在している。
そんな感覚が、静かに続いていく。
この違いは、
「孤独(solitude)」と「孤立(isolement)」の違いなのかもしれない。
パリには孤独はある。
でも、孤立はない。
だからこそ、
自分の輪郭を保ったまま、世界の中にいられる。
日本に帰ってきて感じた違和感は、
もしかするとここにある。
人との距離が近すぎて、
無意識のうちに自分の輪郭がぼやけてしまう。
関係の中に入るか、外れるか。
そのどちらかを選ばなければいけないような空気。
パリで感じたあの心地よさは、
「自由」だったのかもしれない。
誰にも干渉されず、
でも完全に一人でもない。
そんな絶妙なバランスの中で、
ただ自分として存在できること。
私はたぶん、
「人とべったりしなくてもいい。でも、世界とは繋がっていたい」
そんな感覚が好きなんだと思う。
パリは、それを静かに許してくれる街だった。